ノルデスチ映画史の分水嶺となった『匂い立つダンスパーティー』20周年

 

9月27日、第49回ブラジリア映画祭が終了した。そのフィナーレを飾ったのが、初公開から20周年記念の『Baile Perfumado(匂い立つダンスパーティー)』の再放映イベントであった。再放映といっても、既に一部の音声や映像に劣化が出ていた原作の完全修復版の放映であり、さらには、同時に、この名作映画を歴史社会学者たちが論じた著書『Baile Perfumadoの冒険:20年後』の出版記念会も行われたのであった。

1996年のブラジリア映画祭で最優秀映画賞を受賞した『匂い立つダンスパーティー』が、何故また、注目を浴びているのか。それは、この映画が映画史を革新したばかりでなく、ノルデスチ文化全般にもポジティブなインパクトを与えた、と静かに再評価されているからだ。

この映画はパウロ・カルダスとリリオ・フェヘイラという二人の若手監督(当時)による共同作品であり、主人公は、レバノン移民で商人にして写真家・映像作家というベンジャミン・アブラアンだ。

1920年代から30年代にかけて、ノルデスチ内陸部を荒らし回った義賊的匪賊カンガセイロの頭目ランピアゥンと行動を共にして、カンガセイロたちのドキュメンタリー映画を記録するとともに、当時、セアラ州ジュアゼイロ・ド・ノルチの聖人と崇められていたシセロ神父とランピアゥンの会合を設定したフィクサーのような役割も果たす、“裏の政治仲介人”でもあった。この“多面人間”の行動を映画化することでノルデスチ近現代史の再解釈を目論んだ、ともいえる映画であった。

ベンジャミンを演じたのが、ドゥーダ・マンベルチ。ランピアゥン役はルイス・カルロス・ヴァスコンセロスでいずれも好演したが、やはり、シセロ神父役のベテラン俳優ジョフレ・ソアレスが断然の存在を示していた。彼は、グラウベル・ローシャ監督の『アントニオ・ダス・モルテス』、『狂乱の大地』などで活躍した超ベテランだったからだ。

このなかのサントラは、シコ・サイエンスはじめマンギ・ビートの実作者のものだし、シバはじめメストレ・アンブロジオの面々がハベッカ(ミニ・バイオリン)やヴィオラを実演しており、当時絶頂期にあったマンギ・ビートを映像と音楽で取り込んだ映画でもあった。

この映画の最後が、20世紀初頭、青年ベンジャミンがレバノンからレシーフェ港に到着して、「現状不満派の若い連中が世界を変えるんだ」と声を上げるシーンだ。監督が伝えたかったことが、この一言に集約されている。
(レシーフェ●岸和田 仁)


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