新作ブラジル盤紹介■月刊ラティーナ10月号より■その3

月刊ラティーナ10月号で紹介したブラジルからの輸入盤を紹介していきます。記念作品集的な3点、ヴァニア・バストス・イ・マルコス・パイヴァ、MPB4、ホムロ・フローエスについて紹介します。

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ピシンギーニャ没後40年記念コンサート作品

ATR21923

⚫︎VÂNIA BASTOS E MARCOS PAIVA / CONCERTO PARA PIXINGUINHA
⚫︎ヴァニア・バストス・イ・マルコス・パイヴァ / コンセルト・パラ・ピシンギーニャ

CD:2,592円(税込)

◆没後40年を記念して2013年に開催されたコンサートの作品化。実力派コンバス奏者のカルテットをバックに、個性溢れるサンパウロのベテラン女性歌手が歌い上げた快演だ。80年代のバルナベーやイタマール、エドゥアルド・グヂンとの共演、90年代以降はカエターノやジョビン、クルビ・ダ・エスキーナなどコンセプトに即した作品が印象的なヴァニアだが、本作も同様に驚きを持って受け入れるべきだろう。ブラジル音楽の中心に居続ける大樹の一つとも言える作曲家のカヴァーとなれば、歌手にとって真の実力が試されるごまかしの利かない企画であるし、まして60に手が届かんとしている時期でのパフォーマンス。しかしながら当のヴァニアは80年代や90年代と変わらず活き活きとしているように感じられる。レパートリーやマルコスの指揮との相性もお見事。聴けばピシンギーニャが身近に感じられる……という形容は大げさではないと思う。【月刊ラティーナ2016年10月号 掲載 text:船津亮平】

▪️Lamento / Vânia Bastos e Marcos Paiva

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活動50年記念作品!でも依然として若々しい歌声!

CDSS 007716

⚫︎MPB4 / 50 ANOS
⚫︎エムペーベー・クアトロ / 50アーノス
CD:2,052円

◆実に多くのコーラス・グループのアルバムがリリースされるブラジルにあって、その最高峰、MPB4の新作は活動50年を記念してのもの。これだけの活動期間を経ても歌声は依然として若々しい。①のタイトル通り奇跡と言う他ない。数多の作品にゲスト参加し、ソングブックなど企画作品では印象的な曲を担当しているので、グループ名義のアルバムをお持ちでない方でも、そのコーラスは必ず耳にしているはず。最近ではボレロが多い作品もあったが、本作はMPBの多様性を網羅するような作品。ジョアン・ボスコやギンガ、マリオ・アヂネーらのベテランとフレッヂ・マルチンスなどの若手の作品がバランス良く並ぶ。クレイトン&クレヂールのように日本では紹介される機会の少ないアーティストの楽曲も良い。アレンジはジルソン・ペランゼッタ。腕利きのスタジオ・ミュージシャンをバックに軽やかに歌う作風は流石だ。【月刊ラティーナ2016年10月号 掲載 text:ノビオ】

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リオの裏山サンバ古典とサンパウロの前衛サンバの邂逅!

CDSS_007216

⚫︎ROMULO FRÓES / REI VADIO – AS CANÇÕES DE NELSON CAVAQUINHO
⚫︎ホムロ・フローエス / ヘイ・ヴァヂオ – アス・カンソォンイス・ヂ・ネルソン・カヴァキーニョ
CD:2,160円(税込)

◆パッソ・トルトの3作を含めると既に11作目と多作なホムロ・フローエスの、没後30年のオマージェンという形でいよいよ実現したネルソン・カヴァキーニョ集。リオの裏山サンバ古典とサンパウロの前衛サンバの邂逅は、同胞パッソ・トルト/メタ・メタ勢にメストリ・ピンパの打楽器、ドナ・イナー、ナー・オゼッチ、クリオーロの客演を得て、痙攣するギター、唸るベース、テナー・サックスのフリークトーン、ノイズの近景と遠景に響くノスタルジックなトロンボーン、そして、歌はあくまで気高く甘やかにメランコリック。サンバを様式の中に安住させるのでなく、ブルーズであり街のノイズであり、もう一つの面を浮かび上がらせることで、「現代の唄」に生き返らせている。刺々しくささくれだちながら、とめどなく溢れる愛に満ちた作品は、リオ右派には新たなサンバのあり方を、サンパウロ左派には永遠の歌を発見させるだろう。【月刊ラティーナ2016年10月号 掲載 text:松澤正宏】

▪️Romulo Fróes / Rei Vadio As Canções de Nelson Cavaquinho

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