移民政策を積極的に進めるバルセロナの中のアフリカ

Africalismoの最終日に登場したのはギニアビサウ出身のシンガーMû Mbana(右)。素晴らしい歌声だった。

Africalismoの最終日に登場したのはギニアビサウ出身のシンガーMû Mbana(右)。素晴らしい歌声だった。

バルセロナ市は積極的に移民の受け入れを進める上で、2009年から移民の流入を社会の多様化の促進に活かす「Interculturality」という政策をとっている。移民に対して一方的に社会に同化する努力を求めるのではなく、移民を受け入れる側の市民の意識も変えることで、異なる価値観を持った人々が共存できる社会を築いていこうという試みだ。その一環として、世界各国の文化の紹介に力を入れているのだが、このところアフリカに関するものが良く目につくようになった。赤道ギニア(スペイン語が公用語)やセネガルなどサブサハラ(サハラ以南)からの移民の増加に従って、アフリカ文化の存在感も増大している。

今年最も大規模に行われたのはバルセロナ現代文化センターにおいて三月から八月まで開催された MAKING AFRICAだ。現代のアフリカをテーマにした展覧会で、デザイン、家具、イラスト、ファッション、建築、都市、アート、手工芸品、映画、写真と多岐にわたる作品の展示とともに、ディベートや家族向けワークショップなどの関連企画も充実。最終月の八月はアニメ短編作品の上映とアフリカ出身のミュージシャンによるライヴ&DJで構成される野外イベントAFRICALISMOで幕を閉じた。

このイベントを陰で支えたのが「アフリカの外のアフリカ」をキャッチフレーズに活動するRADIO AFRICA MAGAZINEだ。バルセロナのネットラジオScannerFMのアフリカ音楽専門番組から誕生したプラットフォームで、主要メディアが取り上げることのないアフリカ文化の紹介を目指す。公式サイト(http://www.radioafricamagazine.com)では、音楽はもちろん、写真やモード、文学に映画と様々な切り口からアフリカの今を感じることができる。こうした動きは出版にも波及して、2014年にアフリカとアンティル諸島の作家の作品をスペイン語とカタルーニャ語で翻訳出版するWanafrica Edicionesが設立され、サンカラが主人公のコミックなどを出版している。

カタルーニャの隣の州バレンシアのベニカシ市で毎年八月中旬に行われる欧州を代表するレゲエフェスティバルRototom Sunsplashは、アフリカン・ビレッジを中心にダンス教室から講演会までアフリカ文化を紹介を続けてきた。メインステージのトリを飾ったティケン・ジャー・ファコリーが『アフリカ』でライヴを終えると、続いて舞台に登場した主催者が来年はアフリカに捧げるフェスになると発表した。アフリカへの注目はまだまだしばらく続きそうだ。

(バルセロナ●海老原弘子)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ10月号に掲載されています。
こちらから購入ができます。