ヒルベルト・サンタ・ロサの新曲はサルサの街「カヤオ」がテーマ

カヤオ港© Oscar Chambi

カヤオ港 © Oscar Chambi

 

ペルーでサルサと言えば、カヤオ地区。スペインによる植民地時代から太平洋における主要な貿易港として栄えたカヤオ港は、外国文化の入り口だった。サルサも例外ではなく、中米からこの港に入り、大衆に広まったと言われている。また、ペルーで開催されるサルサのコンサートで必ず口にされる、この地名にちなんだ合い言葉もある。

「チン、プン」=「カヤオ」

日本語的には、何らかのおまじないのように聞こえるこの一言、語源も意味もはっきりしていない。導火線の点火から砲弾を発射するまでの音を例えたとか、カヤオ地区をホームとするサッカーチームのファングループが敵対するチームのファンに対して試合前に威嚇するために発した一言だとか諸説あるが、どうやら19世紀後半から言われ始めたらしい。その後、喚起のかけ声としてポピュラー化し、同地区で最もポピュラーな音楽であるサルサのコンサートで浸透していった。セリア・クルスやエクトル・ラボーもペルーでのコンサートで会場を盛り上げる一言として口にし、数多くの楽曲の歌詞でも織り込まれるなど、国際的に知られた文言となっている。

そして、7月末に発表されたヒルベルト・サンタ・ロサの新曲「El Callao de fiesta」にもこの言葉がリフレインされている。曲自体は、カヤオ憲法特別市創立180周年を記念して作られたもので、プロモーションビデオには、カヤオ市の名所で歌うサンタ・ロサの姿が映し出されている。ソニーミュージック・ペルーのフェイスブックでビデオが公開されてから、たったの2日間で30万回のアクセスを記録し、テレビやラジオ各局でも頻繁に放送されていることから、ペルーでは、一気にメジャーな一曲となりつつある。

なお、作詞作曲は、同地区出身の音楽家リチャード・テリー。多発性硬化症を抱えつつも、地元グループのプロモーターとして地道に活動してきた彼の国際的な音楽家としてのデビュー作となった。

一方で、カヤオ市では、創立記念を祝うイベントとして毎年8月にサルサフェスティバルを開催している。市が主催することから、入場料は、日本円で200円から500円程度と庶民価格に設定され、会場となるスタジアムには、毎年超満員の観衆が詰めかける。そして、今年のメイン招聘キャストは、もちろんヒルベルト・サンタ・ロサ。約2万5千人の観衆が地元をテーマとしたこの新曲を堪能した。 (ペルー●川又千加子)


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