大統領候補トランプ氏に対するメキシコ系アーティストの反応

2015年、マイアミ映画フェスティバルに登場したカテ・デル・カスティージョ

2015年、マイアミ映画フェスティバルに登場したカテ・デル・カスティージョ

英国でEU残留か離脱かを決める国民投票が行われ、「離脱」の民意が決定したとき、米国大統領候補のドナルド・トランプ氏はスコットランドにいた。その地で早速、「英国民は国境を越えて侵入する移民に怒っている」と発言、自身のイスラム系市民の米国入り拒否、メキシコからの越境者拒否という“公約”は英国でも支持されたようなものだと発言した。

同候補が固有名詞をあげて指弾したのは長い国境線をもつメキシコ。その国境はメキシコ独立期の混乱に乗じ米国が南進、軍事力に勝った米軍が強奪したメキシコ北部領土の南端だ。そうした米墨史を無視し、差別発言を繰り返す。

当然、メキシコ国内はもとより米国内のメキシコ系市民から反発が起きているし、メキシコ各地で抗議行動も起きている。そうした論議のなかでラテン諸国では世論を左右すると思われる人気芸能人たちの発言が注目されているが、ここではカテ・デル・カステージョの発言に象徴したい。

メキシコ生まれで国籍は米国籍。現在、ロサンゼルスを拠点に活動。メキシコ女優として認識されている。米国籍をもったメキシコ俳優、歌手など芸能人は多く、米墨関係の複雑さを象徴する。

カテは米墨国境を行き来しながら映画にテレビに活躍し、最近はテレノベラ「南の女王」などで主役を務めスペイン語圏では現在、もっとも充実期にある女優のひとりだろう。すでにトランプ候補の批判者であることを宣明にしていたが、最近はさらに強めている。

「大統領、それとも道化師」と問いかけながらトランプ候補批判は、かなり具体的で最近、フロリダ州オーランドのナイトクラブで米国史上最悪の49人が犠牲となった銃撃事件を取り上げ、トランプ候補のイスラム系市民に対する偏見がこうした事件を引き起こす誘因になるだろし、また彼は銃規制の反対者で、大統領にでもなれば、また悲劇は繰り返される、と批判。また、多くのことを語っているが、トランプ候補の米墨国境に壁を建てるという発言に対しては、敬虔なカトリック教徒らしくフランシスコ法王の「壁を超える橋を私たちは建てよう」という言葉を引用して結んだ。

(メキシコ●上野清士)

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