楽曲、アルバムリストが加えられ、「ボサノヴァの歴史」改訂版がリリース

今回発売された改訂版の新しい表紙

今回発売された改訂版の新しい表紙

ボサノヴァを深く知る上での必読書「Chega de Saudade – A história e as histórias da Bossa Nova(邦題:ボサノヴァの歴史)」が、初版発行から26年を経て、表紙も新たに改訂版が発売された。

新たな逸話を加えず、文章表現を現代的なものに変えることのみに留めた改訂について、著者のフイ・カルトロ氏は、これまで世界的に読まれた自らの著作を裏切りたくなかったと改訂版出版に際して行われたインタビューで答えている。

その他、巻末に600曲超のボサノヴァ曲目リストとアルバムリストが掲載された。アルバムリストについては著者自らボサノヴァに関するもっとも充実したディスコグラフィだとご満悦だ。

曲目は、ボサノヴァ以前(1929年〜1958年)、ボサノヴァ期(1959年〜1965年)、ボサノヴァ以後(1966年以降)という3時期に分けられ、発表年代と作詞作曲家名を記して紹介された。

ボサノヴァ以前のリストには、およそボサノヴァらしくない楽曲も含まれているが、多くはサンバ・カンサォンであるそれらの楽曲が、ボサノヴァが生まれる基礎となったと説明している。

ボサノヴァといえば、日本では永遠の憧れのメロディーのように愛されるが、ブラジルでは、聞かれなくなって久しい。もっとも既に70年代頃からすでに冷遇されていたのが実際のようだ。

本書の初版は95年だが、ミュージシャンへの事前のインタビューでは、「お願いだから自分のことをボサノヴァのミュージシャンとして紹介しないでくれ」とリオで発表機会がないゆえに、収入減につながることを恐れたミュージシャンもあったそうだ。

ジョアン・ジルベルトへの取材には、本人が嫌うためボサノヴァという言葉は避けて、ブラジル音楽についての著作のためと説明して電話のみで応じてもらった。

「ブラジルでは90年まで誰もボサノヴァのことなんて知りたがらなかった。親世代だけが好きな、退屈な音楽と見なされていたのです。この本によって何かが変わったのです。トム・ジョビンは、以後エコばかりを語る退屈なおじさん呼ばわりをされなくなったのです」とカストロ氏は自らの著書のボサノヴァ再評価への貢献について今でも誇らしげだ。

(ブラジル●仁尾帯刀)

こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ8月号に掲載されています。
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