「国境なき医師団」支援CDブック発売

『レフヒオ・デル・ソニード』第1集『エーゲ海』

『レフヒオ・デル・ソニード』第1集『エーゲ海』

オーストリアでは、難民受け入れに反対する右派が大統領選で勢いを示すなど、難民問題に揺れるヨーロッパ。3月にトルコからギリシャに流入した難民を送還する取り決めがなされた一方、地中海を渡るルートから、5月には密航船が転覆し700人以上が亡くなったとされる悲惨な事故が起きている。

難民支援などに取り組み、この転覆事故でも救助船を送り込んだという、「国境なき医師団」の活動をバックアップするベネフィットCDブック『レフヒオ・デル・ソニード(音の避難所)』がスペインでリリースされた。数多くの話題作をプロデュースしてきたハビエル・リモンの総指揮により、彼の書いた曲をバークリー・メディテラネアン・ミュージック・インスティテュートの若手音楽家たちが演じる。全4集で、各タイトルには『エーゲ海』『アドリア海』『リビア海』『イオニア海』と、それぞれ地中海の海域の名が冠せられた。

メディテラネアン・ミュージック・インスティテュート(MMI)は、バレンシアに分校のあるバークリー音楽大学が、地中海各地の音楽的伝統を結びつける枠組み作りのため11年に創設したというもので、リモンがアーティスティック・ディレクターが務めている。第1集の冒頭曲でリモンのギターをバックに歌声を披露している、ウガンダ人の父とシチリア人の母を持つという米国人女性アーティストのトニーナ・サプトをはじめ、パレスチナ人チェロ奏者のナジーム・アラトラシュ、ヨルダン人ヴァイオリニストのライス・シディクら、MMIに学んだ多国籍の音楽家たちが本作の録音に参加した。

また各タイトルには、マリオ・バルガス・リョサ、フアン・ゴイティソーロ、ターハル・ベン・ジェルーン、ジョン・カーリンといった著名作家らが一文を寄せ、フォト・ジャーナリストやイラストレーターのビジュアルが配されている。

第3集にはアレハンドロ・サンスが参加した「ビエネン」を収録。このPVには、俳優のダニ・ロビラら多くの著名人が登場する。また、第4集のラストにはホルヘ・ドレクスレルが息子パブロと作ったナンバーを収めており、5月17日に開催された本作発表イベントでは、ユダヤ系ドイツ人の家系を引くホルヘが、マドリード出身のパレスチナ系のシンガー・ソングライター、マルワーンと共に「ミロンガ・デル・モーロ・フディオ(ユダヤ系モーロ人のミロンガ)」を演じたとのことだ。

(スペイン●長嶺 修)

こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ7月号に掲載されています。

こちらから購入ができます。