映画『シネマ・ノーヴォ』カンヌ映画祭で部門賞受賞

映画『シネマ・ノーヴォ』カンヌ映画祭で部門賞受賞

映画『シネマ・ノーヴォ』カンヌ映画祭で部門賞受賞

5月21日、カンヌ映画祭のドキュメンタリー部門でブラジル映画『シネマ・ノーヴォ』が部門賞ロエイユ・ドールを受賞した。

この90分のドキュメンタリーは、1950年代末から60年代にかけてブラジルばかりか世界の映画界を震撼させたシネマ・ノーヴォ運動を、代表作のカット引用や関係者の証言で裏付けながら、詩的にまとめ上げた作品である。

映像シーンが引用されているのは、グラウベル作品では『狂乱の大地』、『黒い神と白い悪魔(太陽の地の神と悪魔)』、ネルソン・ペレイラ作品では『リオ40度』、『乾いた生活』などであり、証言インタビューに登場するのは、グラウベル・ホーシャ、ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス、カカー・ヂエゲス、ルイ・ゲーハ、ジョアキン・ペドロ・ヂ・アンドラーデ、レオン・イッツァーマン、パウロ・セザル・サラセーニ、といった面々だ。

実作者・監督として話題作を制作する一方、映画批評家としては、「キューバ革命に先行して第三世界で最初の革命的映画が爆発した。それは、ネルソン・ペレイラの『リオ40度』である」、とか、「西欧の帝国主義的映画や社会主義的扇動映画の経済的かつ美的独裁と闘う唯一の形態としてゲリラ的映画を主張し続ける」(主著『シネマ・ノーヴォ革命』)といったラディカルな物言いで物議を醸したのが、シネマ・ノーヴォを主導したクラウベル・ホーシャであったが、今回の受賞作の監督エリッケ・ホーシャ(38歳)は、そう、グラウベルの息子だ。グラウベルが病死したのは、1981年であったから、その時エリッケ少年は3歳であった。

「シネマ・ノーヴォ運動は、いつも、僕という人間を形成するにあたってエッセンスを供してくれたし、僕が映画をやりたいとの願望を抱いたのも、この映画群を見たからだ」、「別の世代と映画を通じて対話したい、との衝動からこの映画を作ろうと思ったのだ」、とエリッケ監督は、地元紙とのインタビューで答えているが、まさにクラウベルの映画DNAを継承しているかの如き、語りだ。

「『シネマ・ノーヴォ』は新しいスタイルの印象主義的な映像エッセイである」というのが選評だったが、くしくも、その4日前、『アクアリウス』の監督クレベル・メンドンサ・フィリョや主演女優ソニア・ブラーガらが、大統領弾劾反対の政治プロテストパフォーマンスを展開していた。カンヌでは図らずもブラジルが注目の的となったのであった。

(レシーフェ●岸和田 仁)