ブラジル文化省の廃止から急転復活へ カパネマ宮殿での抗議

ブラジル現地時間5月16日に、ジウマ大統領の弾劾からテメル副大統領が暫定大統領に就任してから騒ぎ出された文化省廃止の反対を訴える抗議活動“Ocupa Capanema”が、リオデジャネイロの中心街、セントロに位置するグスターヴォ・カパネマ宮殿で、アーティストや芸能人らによって始まった。この文化省廃止反対の抗議活動は、リオ以外の主要都市でもアーティストや文化プロデューサーらが参加し、公的機関の建物や役所の前で行われた。

リオの舞台となったカパネマ宮殿は、ブラジルにおける芸術、文化的アイデンティティの推進・奨励や歴史財産の研究・保護などを職掌とする文化省の本部があったところである。現在は国立芸術財団(Funarte・旧文化省傘下施設)を収容している所で、活動開始から約50人近い抗議者たちが入れ替わり泊まり込みで反対運動を行った。文化省といえば、2003年にブラジルを代表する音楽家ジルベルト・ジルが大臣に就任したことでも知られている。

背景となったのは、ジウマ大統領の弾劾で文化省の廃止が発表され、テメル大統領代行が、政府予算削減の都合上32あった省を23に削減したことだった。その中に文化省が含まれていたからなのだ。文化省の廃止は、女性や黒人が大臣に選ばれなかったことと並び、テメル政権の問題として瞬く間に批判の嵐にさらされてしまった。カパネマ宮殿に多くの芸能人や有名人が登場し、猛烈な反発と共に “Fora Temer!”「テメル退け!」の声を上げた。その中には、世界的歌手のカエターノ・ヴェローゾを始めとするアルナルド・アントゥネス、レニーニ、エラズモ・カルロス、セウ・ジョルジ、ペドロ・ルイースなど著名な音楽家らもいた。

カエターノは20日会場に現れ「文化省は、国民のものだ!」と訴え会場で1時間以上のライヴを行い、観客は大興奮となり会場は大歓声に包まれた。ブラジルは、音楽や映画、演劇などの活動に対し、文化省から援助金が支給されていて、芸能界とジルマ政権(労働者党=PT)との結びつきが非常に強いのだ。そして、遂にこうした圧力にテメル氏も抗せず、現地時間21日には、文化省の復活を明らかにした。この運動は、復活の決定が発表された5月21日の午後も同場所で継続されていた。その後続いたプロテストは、現在の文化活動の最も新しいステージとなり、様々なアーティストたちが民主主義のあり方を訴える場所としてライヴ会場化したのである。

こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ7月号に掲載されています。

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(リオデジャネイロ●MAKO)