「オ・ソンブラ」として知られたポルトガル・ギタリスト、フェルナンド・アルヴィン逝去

 ポルトガル・ギターの巨匠カルロス・パレーデスの脇を四半世紀にわたって支えたギタリストのフェルナンド・アルヴィンが、2月27日にリスボンで亡くなった。80歳だった。「オ・ソンブラ」として知られた彼は、慎み深い「影」の存在であり、ポルトガル音楽史に残る偉大な存在パレーデスを主役として輝かせる名脇役であった。
 1934年11月6日、カスカイス生まれ。若いころからファドハウスでキャリアを積み、59年にパレーデスのもとで演奏するようになった。パレーデスとは世界各国を公演ツアーで巡り、そのほぼすべての録音に参加。ガルシア・ロルカ作品の舞台音楽や、パウロ・ローシャ監督の60年代の映画『オス・ヴェルデス・アーノス』『ムダール・デ・ヴィーダ』のサウンドトラックなどにも携わる。パレーデスとの活動は84年まで続けられた。
 アルヴィンの音楽的関心は、ジャズなど他のジャンルにも及び、ジャズクラブの常連として出入りしたり、60年代にはポルトガル国営放送局の番組「ノヴァ・オンダ」を通じ、この国にボサノヴァを初めて紹介した。アマリア・ロドリゲスが、70年の傑作アルバム『コン・ケ・ヴォス』に収録されている「蟻のボサノヴァ」の録音に迎え入れたのがアルヴィンだ。カエターノ・ヴェローゾが、かつてポルトガルを訪れファドを歌った際、伴奏に彼を招いたとも伝えられる。
 アルヴィンは、ジョゼ・アフォンソやアントニオ・シャイーニョら、数々のアーティストとステージや録音で共演してきた。07年には、ポルトガル・ギター奏者リカルド・パレイラがアルヴィンを伴奏役に指名し、彼に捧げた初ソロ作『ポルトガル・ギター新世代』(ライス・レコードからの日本配給盤邦題)を発表している。
 70年代には自ら率いるコンジュント・デ・ギターラス・デ・フェルナンド・アルヴィンで2枚のシングルをリリースしたとのことだが、彼の唯一のリーダー・アルバムとなったのが、11年の『オス・ファドス・イ・アス・カンサォンイス・ド・アルヴィン』。2枚組の本作品には、カマネー、アナ・モウラ、アントニオ・ザンブージョ、カルミーニョ、フィリパ・パイス、ルイ・ヴェローゾ、ヴィトリーノ、カルロス・ド・カルモら、ファドやポルトガル・ポピュラー音楽の新旧スターたちがこぞって名を連ねており、オ・ソンブラ=影の男は、その最晩年にキャリアが再認識され、脚光を浴びる存在となっていた。

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