ブラジルの大衆はいま、どんな音楽をどこで、どのように聴いているのか?このたび、大手紙「フォーリャ・デ・サンパウロ」は、ブラジル大衆音楽の2014年からの3年間の動向について調査した結果をウェブ上で発表した。
YouTubeは、ブラジルでも最もアクセスの多い動画共有サービスだ。これを、音楽を聴くためのツールとする利用者人口が、メキシコに次いで、世界で2番目に多いのがブラジルなのだそうだ。(日本は13位。)この環境を利用して、フォーリャ紙はYouTubeで配信されている人気アーティスト340組の楽曲が、どの地域でどれだけアクセスされているのかを同アプリのツールを使って、全1340億アクセスからあぶり出した。その結果から二つほど話題を紹介したい。
◆地図を塗り替えるマリリア・メンドンサ
ブラジルで最も人気のジャンルはブラジル風カントリーのセルタネージョだ。農牧地の広がる南部、中西部でファンが多く、これまで男性ヴォーカルのデュオが固定化したジャンルの様式であった。そんななか2013年にYouTubeデビューした女性歌手マリリア・メンドンサは、4年間でジャンルの粋を超えて、目下アクセス数最多の新星となった。メンドンサは、セルタネージョ人気が高くない北部・北東部での活動で、主に女性のファンを味方に付け、それから全国ツアーを行う前例のない展開で人気を得た。
◆圧倒的人気の3ジャンルと〝王様〟の健在
ブラジルで最も人気の高い音楽といえば、サンバ、ボサノヴァでなく、セルタネージョ、ファンキ、ゴスペルの3ジャンルだ。調査対象の3年間のトップアクセス20には、上述のマリリア・メンドンサを筆頭にセルタネージョ歌手7組、ゴスペル歌手6人、ファンキMC2人が入っている。
ブラジルにはキリスト教福音派信者が多いので、自ずとゴスペルが高い支持を得る。それに加えて米国とは異なり、神様を讃えさえすればゴスペルに分類されるので、音楽趣味の異なる様々なリスナーを引きつけるようだ。
ファンキの人気は、インターネット普及がインディーズレーベルの可能性拡大と中産階級の若者のライフスタイルの変化をもたらしたことの影響が大きいと伝えている。またファンキは、もはやリオよりサンパウロのほうが勢力マップを広げ、南部、北東部でも支持を得ている。もはや無視できないジャンルから、メインストリームの一つとなったと言えよう。 なお、このトップ20に、ロベルト・カルロスが16位でランクインしており、〝王様〟の人気が未だ健在であることを示した。またリオ五輪開幕式にも出場したセクシー歌手アニータは11位を占めた。(サンパウロ●仁尾帯刀)
こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ2018年3月号に掲載されています。
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