ますます熱いポルトガルジャズシーン ホット・クルービとマノ・ア・マノ

マノ・ア・マノ 公式サイトからアルバムの視聴や購入が可能。ライヴ写真や自宅セッション動画も公開されている。 https://manoamanosantos.weebly.com

マノ・ア・マノ
公式サイトからアルバムの視聴や購入が可能。ライヴ写真や自宅セッション動画も公開されている。
https://manoamanosantos.weebly.com

ヨーロッパ最古のジャズクラブがどこにあるか、皆さまご存知だろうか。実は、ポルトガルの首都リスボンに存在するのである。そのクラブの名前は、ホット・クルービ・デ・ポルトガル(Hot Clube de Portugal)。
1948年リスボン中心部のリベルダーデ通りに面した歓楽広場にジャズ愛好家達の社交場としてオープン。1979年には付属教育機関としてルイス・ヴィラス=ボアス・ジャズスクールが開校。ブルーノ・ペルナーダス、ジョアン・ハッセルバーグをはじめ、日本でも話題の若手ジャズミュージシャンの殆どがこのスクールの卒業生であり、ジョアン・バラーダスやサルヴァドール・ソブラルもここで研鑽を積むなど、オープン以来ポルトガルジャズシーンの中心として存在してきた。長い歴史の中で、経営不振や火災によるクラブ全焼など、何度も閉鎖の危機に直面したが、リスボンっ子達や世界中のジャズファン、そしてリスボン市の支援により、ついに今年創立70周年を迎えることとなった。記念イベントや特別ワークショップなどの開催が予定されており、話題に事欠かない一年になりそうだ。
そのホット・クルービ周辺で今年注目のアーティストが、マデイラ島出身のジャズギタリスト兄弟、ブルーノ・サントスとアンドレ・サントスによって結成されたマノ・ア・マノ(Mano A Mano)だ。ウクレレやカヴァキーニョのルーツである、マデイラ島の伝統楽器ブラギーニャを用い演奏するのは、オリジナル楽曲の他、セロニアス・モンクやトム・ジョビンらによるジャズやボサノヴァの定番曲。どこか懐かしいブラギーニャの素朴な音色、それでいて洗練された楽曲展開は、彼ら兄弟の高い技術に裏打ちされているからこそ心地よく、新しく響く。それもそのはず、兄ブルーノはホット・クルービ専属セクステットのギタリストを務める傍ら、付属ジャズスクールの教頭を務め、リスボン音楽院などで教鞭を取る教育者として活躍。弟アンドレもアムステルダム音楽院のマスター課程を修了し、マドレデウスのヴォーカリスト、テレーザ・サルゲイロのソロワールドツアーに帯同するなど、両者とも現代ポルトガル屈指の名ギタリストである。ポルトガル国外でも注目され始めており、アメリカのジャズ専門誌ダウンビートで特集記事が組まれ、ニュースサイトObservadorの選ぶ「2018年必聴のポルトガル音楽12選」のひとつに選出されるなど、見逃し厳禁であることは間違いない。(ポルトガル●山口詩織)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ2018年3月号に掲載されています。
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