フジモリ元大統領恩赦に対し アーティストや文化人は反対を表明

リマ市内の4回目の抗議デモで、手作りのプラカードを手に行進する市民。

リマ市内の4回目の抗議デモで、手作りのプラカードを手に行進する市民。

昨年12月24日に発表されたフジモリ元大統領恩赦のニュースは、日本でも多くのメディアが取り上げたため、ラティーナの読者もご存知だろう。
元大統領は、2007年に収賄や権力乱用などの罪で禁錮6年、さらに2009年には、人権侵害などの罪で禁錮25年の有罪判決を受け、これまで警察施設に設けられた特別な収容所で収監されていた。クチンスキ現大統領が政権に就いてから「恩赦が行われるのではないか」という噂は何度もあったが、その度に現大統領は否定し、アラオス首相も直前まで「恩赦はない」との声明を出していた。それにも関わらず、実行されたのである。
今回の恩赦は、『政治的取引』によるものとの認識が一般的だ。それというのも、ブラジルの建設大手オデブレヒト社を巡る汚職事件でクチンスキ大統領への疑惑が浮上し、フジモリ元大統領の長女のケイコ・フジモリ率いる「フエルサ・ポプラル党」が昨年12月に罷免決議案を提出するも、採決の21日に同元大統領の次男のケンジ議員ら10人(同政党所属)が棄権票を投じ、罷免を免れていたからだ。
恩赦が発表されたのは、クリスマスイブの夕方だった。カトリック信者が圧倒的に多いペルーでは、翌25日は一年の中でも最も重要な祝日とされ、大多数が家族と一緒に過ごし、キリストの誕生を祝う。しかしながら、両日ともに、恩赦のニュースを聞きつけた大勢の市民が、セントロ地区に集まりデモ活動を行った。さらに、28日は約1万5千人が、年が明けた1月11日には3万人以上が集結しデモ行進を行い、恩赦の無効と現大統領の退陣を求めた。
こうした抗議の声は、アーティストやその他の文化人からも挙げられている。作家では、バルガス・リョサが今回の恩赦を「違法で無責任な行為」と批判し、アルフレド・ブライスやフェルナンド・イワサキなど、230人が反対を表明している。また500人を超えるミュージシャンや200人以上の映画制作関係者、600人以上の造形美術アーティスト、さらに歴史家や心理学者、社会学者など、反対の署名は、数千人を数える。
コスタリカに本部を置く米州人権裁判所は、2月現在、被害者遺族の申し立てに基づいて恩赦の適法性を審理している。判決次第では、同裁判所がペルー政府に恩赦の取り消しを求める可能性もあるとされている。また、ペルー議会では、再びクチンスキ大統領の罷免要求が提出されていることから、今後の行方が注目される。(リマ●川又千加子)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ2018年3月号に掲載されています。
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