中米地峡国パナマ、ワールドカップ初出場が決定!

パナマ 対 トリニダード・トバゴ戦の一部

パナマ 対 トリニダード・トバゴ戦の一部

ロシアW杯の予選の対戦相手が決定した。今大会に2か国が初参加した。北欧のアイスランド、そして中米地峡国のパナマだ。
総人口が335万ほどしかないアイスランドが強豪国犇めく欧州予選から抜け出したのは奇蹟的なことだが、それ以上の番狂わせが北中カリブ地域からパナマが初出場を決めたことだ。パナマも総人口はわずか400万だから都民の3分の1ほどでしかない。しかも、パナマはアイスランドとは違って元来、国民的スポーツは野球だ。近年、周辺諸国の影響を強く受けているとはいえ野球に人気がある。
首都パナマ・シティなどにあるスポーツ・バーなどで観戦されているのは米国のメジャー・リーグ。パナマから日本のプロ野球に今日まで8選手が出稼ぎに来ている。野球国なのだ。ちなみに、サッカーJリーグへは過去3選手しかパナマから来ていない。つまりアイスランドよりさらにサッカーの競技人口は少ないのだ。
おなじ中米地峡国でサッカー国のグァテマラやベリーズが出場を果たしていない事実を知るとき、さらに今回のパナマ出場は偉業としかいいようがないし、出場定番国の米国と競い、それを退けて駆け上がってきたのだ。
W杯への出場が決まった翌日をパナマのバレラ大統領は、一日限りの特例とはいえ、「パナマの歴史的な日として祝福しよう」と10月11日を「国民の休日」とした。パナマにとって、そうした「休日」はパナマ運河が米国施政からパナマに返還された1999年12月31日から2000年1月1日以来だ。
ラテンアメリカ諸国で野球の盛んな国は皆、米国に長い従属を強いられてきた国だといわれてきた。今も自治領として独立を果たせていないプエルトリコ、米軍の軍事占領を受けてきたドミニカ共和国、米国の傀儡大統領を戴いてきたキューバ、米国の弁護士を大統領に就かせたニカラグア、石油の富を奪われつづけたベネズエラ、そして運河と両岸の広大な地域を支配されてきたパナマ、みな例外なく野球国となった。だから、そんな野球国からW杯への参加を実力でもぎ取ったパナマは米大陸諸国の文化的転換ともいえる快挙だ。
W杯では毎回、出場国をサポートする応援歌(音楽)を収録したCDアルバムが制作され、ほぼ全世界で発売される。かつて、アルゼンチン の応援歌に日本の宮沢和史さんの「島唄」(アルフレッド・カセーロ歌)が選ばれたことがあった。パナマは今回、そこに初めて加わるわけだ。パナマの民俗的音楽バジェナードかクンビアか、はたまたパナマ出身、サルサのルベン・ブラデスが一曲提供するか…そんな愉しみもある。
(パナマ●上野清士)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ2018年2月号に掲載されています。
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