マルチ芸人ジョー・ソアレスの自伝(上巻)刊行、ベストセラーへ

原題『O LIbro De Jô』 (『ジョーの本』邦訳)

原題『O LIbro De Jô』
(『ジョーの本』邦訳)

ジョー・ソアレス。1938年リオで生まれたジョーは映画俳優にして“太目の”コメディアンとしてデビューしたのが、1950年代末であり、1970年代以降はブラジルのテレビ文化の躍進と並行してその多彩な才能を発揮してきた。英語もフランス語も自由に駆使する彼のトークショーに出演した人たちは、元大領領、政治家から有名ミュージシャンや作家はもちろん歴史学者・数学者や黒人運動活動家まで、雑多といえるほど多彩であり、日本人では、渡辺貞夫、小野リサ、宮沢和史も彼とのトークを楽しんだのだ。さらには作家としては、邦訳された『リオ連続殺人事件』をはじめとするミステリー小説でベストセラーを連発しており、文字通り多才なタレントだ。
そんなジョーも今や79歳になり、周囲から懇願されて自伝を出すことに。とても一冊では収まらず、上下二巻となったが、その上巻が11月24日にCia das Letras(文芸出版)から刊行され、大きな話題となっている。タイトルは『ジョーの本』。528頁と分厚いが、たちまちベストセラー入りしている。
但し、自伝といっても彼自身が書いたのではなく、著名な日系ジャーナリスト、マチナス・スズキJrが、100回以上も彼にインタビューしたものをまとめたものだ。累計録音時間は150時間以上という、超ロングインタビューの文章化だが、上巻には、家族のルーツから始まって、彼の少年期、青年期までが記されている。
彼はリオ生まれだが、父方のルーツは東北伯のパライーバ州だ。祖父はパライーバ州知事も務めた有力政治家であり、父親の叔父の一人は連邦議員にして外交官。親戚にはスポーツ界で活躍した人もいる。
父親オルランド・ソアレスは株の売買で財を成したが、その一人息子であったジョー(本名:ジョゼ・エウジェニオ・ソアレス)は、小学校まではリオ、13歳からスイス・ローザンヌの有名中高一貫校へ海外留学している。ジョーの話す英語もフランス語も完璧なのは、このスイス留学体験のおかげだ。
スイスで世界各国からの同級生たちと友情を深めたジョー少年は、大学はオックスフォードかケンブリッジを想定していたが、事態は急変、父親の事業が破綻してしまう。やむなく18歳でブラジルに帰国、旅行代理店をへて、演劇の世界へ。当時の人気映画監督カルロス・マンガのドタバタ映画『スプートニクの男』にアメリカ人スパイ役で出演し、芸能界デビューとなった。と、超面白本であり、早くも下巻の刊行が鶴首されている。
(レシーフェ●岸和田 仁)


こちらの海外ニュースは月刊ラティーナ2018年1月号に掲載されています。
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