すっかりリスボンの秋に定着 ファドの祭典カイシャ・アルファマ

フェスティバルのロゴとラインナップ

フェスティバルのロゴとラインナップ

リスボンの9月。夏のヴァカンスシーズンが終わり、街中に溢れかえっていた外国人観光客達が潮を引いた様に去っていき、リスボンがリスボンっ子の手に戻る、街が日常を取り戻す季節だ。
そんな秋の始まりのリスボンにすっかり定着したのが、ファドのフェスティバル、カイシャ・アルファマ。第5回目の今年、会場はもちろんアルファマで、イベントの規模は10ステージまでに拡大。ファド博物館を中心に、アルファマ地区の教会や展望台、広場や集会所など、普段ファドを聴けないような場所でも生の歌声と演奏を楽しむことができる。
ヘッドライナーは2010年代のファドシーンを背負って立つ、日本でもお馴染みの二人、アントニオ・ザンブージョとジゼラ・ジョアン。また、ジャズピアニストながら亡きアマリア・ロドリゲスの歌声を楽曲で使用することを許可されたジュリオ・レゼンデや、多くのファド・コンテストで上位入賞し着実に知名度を上げているマルコ・ロドリゲスなど、若手実力派も揃い踏みだ。
また、型破りなファディスタとして90年代に物議を醸したパウロ・ブラガンサも久々にステージに登場。デビュー当時からその音楽スタイルや服装、既存のファドに対する批判発言で伝統的なファディスタやそのファンからのバッシングを受けてきた彼だけに、会場に集まったファドファン達を前にどのようなパフォーマンスを繰り広げるか注目されている。
一方で、一晩限りの共演を目撃することが出来るのも、フェスティバルの醍醐味だ。ホセ・ゴンザレスは、人気オーディション番組「ゴット・タレント・ポルトガル」に出場したルンバフラメンコバンドのサングレ・イベリコと共演。また、今年初頭に新作『心のマニュアル』を発表したエルデル・モウティーニョは、弟のペドロ・モウティーニョと共にステージに立つことが発表されている。今年は例年以上にバリエーション豊かなラインナップで、大きく一括りにファドと呼んでも、その多様性を体感できるまたとない機会になるだろう。
余談だが、息子が名門サッカークラブベンフィカの下部組織入りしたことを受けて、先月リスボンに移住してきたマドンナ。シントラに屋敷を購入し、アルファマ散策をはじめ、リスボンでの生活を楽しんでいる様子を彼女のSNS上で見ることができる。最近では、親交があったセザリア・エヴォラの楽曲を聴きながらパーティーを楽しむ様子をアップデートしており、アルファマで音楽を楽しめるこのイベントに、彼女もひょっこり顔を出すかもしれない。
(ポルトガル●山口詩織)


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