メキシコの60年代カルト暗黒小説の傑作、再度映画化へ

セバスティアン・デル・アモ監督 『EL COMPLOT MONGOL』 公式映画イメージ

セバスティアン・デル・アモ監督
『EL COMPLOT MONGOL』
公式映画イメージ

メキシコ出身の政治小説家、ジャーナリストのラファエル・ベルナルによって、1969年に書かれたカルト小説、『ELCOMPLOT MONGOL』が、2014年にオスカー外国映画賞候補のメキシコ代表となった作品、『カンティンフラス』(メキシコの伝説的喜劇俳優の伝記)の監督、セバスティアン・デル・アモによって映画化される。2017年8月17日より、メキシコシティのダウンタウンにて、撮影が始まった。
冷戦時の60年代後半の物語で、チンピラと中華系移民が凌ぎを削る、メキシコシティ下町のチャイナタウンが舞台。米国大統領のメキシコ来訪の機会を利用して、共産主義側により、米大統領暗殺計画が囁かれていたため、チャイナタウンに住む殺し屋フィルベルトは、米大統領が訪れるまでの72時間以内に、暗殺計画を阻止する任務を請け負う。FBIやKGBと共同で、チャイナタウンを牛耳るマフィアを調査する行動を起こすフィルベルトだが、人を殺さずに穏便に任務を遂行せよ、という依頼とは裏腹に、暴力と死に満ちた険しい道を歩むこととなる。
レイモンド・チャンドラーのハード・ボイルド小説『長いお別れ』からの影響も感じられる『EL COMPLOT MONGOL』は、原作者ベルナルの脚本のもとに、1978年に映画化もされている。ブラックユーモア、政治、汚職、暴力、虚無、ヒューマニズムを描く、メキシコ暗黒小説の金字塔的作品であり、そのテーマや描写は、原作が発表されて、50年近く経つにも関わらず、今でも魅力的で、全く色褪せていない。それどころか、メキシコの現況は、小説発表当時とほとんど変わっておらず、もしや、もっと酷くなっているかもしれない。そんな、未だに愛され続ける鋭い小説なだけに、新生『EL COMPLOT MONGOL』の監督セバスティアン・デル・アモの手腕が試される。メキシコを代表する俳優のダミアン・アルカサルが主人公を演じ、ハリウッドでも活躍するコメディアン・俳優のエウヘニオ・デルベス、日系メキシコ人俳優のバーバラ・モリ、メキシコで最も有名な子ども番組の司会者、チャベロことハビエル・ロペスも出演する。11万2000米ドル相当の制作資金をかけて、再度オスカーを狙う勢いだ。2017年8月17日に行われた記者会見では、同時期に、メキシコシティのダウンタウンで『GODZILLA:KING OF MONSTER』(渡辺謙出演)の撮影が行われていたため、「ゴジラが私たちの撮影の邪魔にならないといいなあ」というアモ監督の冗談も飛び交った。さて、リメイクを超えた映画になりうるか、期待が高まるところだ。
(メキシコシティ●長屋美保)


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