ブラジル音楽史上最強のドラマー、本格派サンバ・ミュージシャン ウィルソン・ダス・ネヴィスの訃報

ウィルソン・ダス・ネヴィス

ウィルソン・ダス・ネヴィス

ブラジルポピュラー音楽界で、1982年からシコ・ブアルキのドラマーとして最後の瞬間まで、第一線で活躍し続けた史上最強ドラマー、コンポーザーそして歌手として名を馳せたサンビスタ、名手ウィルソン・ダス・ネヴィスが、癌と戦い8月26日にこの世を去った。
公式SNSのページで、「とても残念なお知らせがあります。我々の師匠ウィルソン・ダス・ネヴィスは、ドラムスティックを握りこの世の反対側で演奏するために旅立ちました。沢山の良い想い出をつくってくださいました」と訃報をファンに伝えた。
重鎮サンビスタとして活動していた彼のエスコーラ・ヂ・サンバ、「インペリオ・セハーノ」で3日間葬儀が行われ、多くの関係者、ファン達がお別れを告げた。
彼が口にしていた「ô sorte=幸運を!」という言葉は、アーティストの間で誰もが知り尽くす彼のお決まりの文句だった。リオデジャネイロ出身で18歳にプロドラマーとしてデビューし、今までに、あらゆる多くの人気有名アーティスト800枚ものアルバム録音に参加してきた。1996年には歌手として初ソロアルバム『O som sagrado de Wilson das Neves=ウィルソン・ダス・ネヴィスの神聖な音』を60歳の年に発表。その後、3枚ものソロアルバム『Brasão de Orfeu=オルフェウスの紋章』(2004)、『Pra gente fazer mais um samba=もっとサンバを作るために』(2010)そして最後のアルバムとなった『Se me chamar, ô sorte=もし僕を呼ぶなら、幸運だよ』 (2013)を発表し、ネルソン・サルジェント、アルジー・ブランキ、シコ・ブアルキやパウロ・セーザル・ピニェイロらと共作を生み出し続けた。
彼の楽器に対する彼の哲学はこうであった。「最新の注意を払い扱わなければならない。音楽、リズムを聴く以上に感じなければならないのさ!」完璧な口ひげでキリッとしたスーツに身を包み、優雅な振る舞いで、しかも謙虚に「俺には何にもわからないさ、だってお馬鹿さんだからね!」「ブラジルで生きているけれど、ブラジル人は誰も俺のアルバムを持っちゃいないさ、外国でしか俺は知られていないからね! 日本に行けばサンバ好きな人は、みんな俺のアルバムをもっているのさ。」と、いつもユーモア一杯に笑顔で語っていたサンバの巨匠が、今日もとても恋しい。合掌
(リオデジャネイロ●MAKO)


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