大規模森林火災にアーティスト達が立ち上がる

チャリティーコンサート「Juntos Por Todos(皆のためにひとつに)」

チャリティーコンサート「Juntos Por Todos(皆のためにひとつに)」

空気の乾燥した夏期の森林火災は珍しくないポルトガルだが、6月17日にポルトガル中部、レイリア県ペドロガン・グランデで発生した大規模火災は、死者64人という、ポルトガル史上最悪の自然災害となった。
落雷が原因で発生した森林火災の消火作業は困難を極め、宇宙からの写真でも判別出来るほど広範囲に延焼。ポルトガルの消防士約2000人に加え、スペイン、フランスなどからの救援部隊も投入されたが、それでも鎮火には一週間を要した。家族連れや子供を含む犠牲者の多くは森林に囲まれた国道沿いに集中し、その大半が避難の途中で炎に巻き込まれたとみられ、痛ましい結果に政府は犠牲者追悼のため三日間の国喪期間を定め哀悼の意を表した。
一方、リスボンや他の都市部では、火災発生後かなり早い段階から被災者や消火作業中の消防士のための支援物資の募集がスタート。それと同時に立ち上がったのが、ポルトガルのミュージシャン達だ。
火災発生から10日後、6月27日にリスボン最大のコンサート会場、MEOアリーナで開催されたチャリティーコンサート「Juntos Por Todos(皆のためにひとつに)」には、25組のアーティストが参加。15ユーロのチケット代金は収益の全てが被災者と被害地域に寄付される仕組みで、超豪華アーティスト達のコンサートが観れてしかも被災者支援になるとあって、チケットはたちまちソールドアウト。急遽入場権なしのドネーションチケットもインターネット上で販売が行われた。
1万4千人が集まったコンサートの様子はラジオ、TV、SNS上で生中継され、アナ・モウラは「Desfado」、ジョルジュ・パルマとセルジオ・ゴディーニョによるデュエットで「Portugal, Portugal」、ユーロヴィジョン優勝以降人気沸騰中のサルヴァドール・ソブラルは「Amar Pelos Dois」のピアノ弾き語りなど、様々なジャンルの大物アーティスト達がヒット曲を披露。また、コンサートと同時進行で呼びかけられていた電話募金では約115万ユーロの金額が集まり、被災地域に再生への希望を与える一晩となった。
火災発生から数日後に企画と開催発表を行い、10日後には無事に大成功を収めた今回のチャリティーコンサート。日本と比べると、良くも悪くも物事の進行が遅い面もあるポルトガルだが、強い目的と団結があれば、驚くべき勢いで物事を成し遂げる意思とスピードがあるのだ。
(ポルトガル●山口詩織)


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