サンパウロ交響楽団が世界初演した アンドレ・メマーリの〝交響的変奏曲〟

アンドレ・メマーリ

アンドレ・メマーリ

アメリカ、ニューヨーク生まれの女性指揮者マリン・オールソップが2012年より首席指揮者として就任しているサンパウロ交響楽団(OSESP)が、日本人ピアニスト小曽根真を定期公演のソリストに招き、Sala São PauloとCampos do Jordãoの劇場で6月29日から7月2日までの4日間共演した。
今回の定期公演で演奏された曲は、北・南アメリカを代表する作曲家たちの作品。まず第一部前半は、ブラジルのヴィラ=ロボスらと並びラテンアメリカでもっとも重要なクラシック作曲家の一人、アルゼンチンの作曲家アルベルト・エバリスト・ヒナステラの交響的変奏「Variaciones Concertantes op.23」。そして一部後半では、現代ブラジルが生んだ最高峰ピアニスト、作曲家のアンドレ・メマーリに、OSESPが依頼し書き下ろされた「交響的変奏曲(Variações Concertantes sobre um tema de Ernesto Nazareth)」が世界初演された。ブラジル音楽を世界に広め、20世紀クラシック音楽界を語るうえで欠かせない存在であるヴィラ=ロボスは、今年で生誕130周年を迎える。ヴィラ=ロボス以降で重要な人物の一人とされる作曲家、フランシスコ・ミニョーネは生誕120年を祝い、植民地時代、宗教曲を400曲以上も書いたジョゼ・マウリシオ・ヌネス・ガルシアは、生誕250年を記念する。ショーロ界初の女性ピアニスト、初の女流指揮者、作曲家のシキーニャ・ゴンザーガは、生誕170周年を迎えるなど、今年はブラジルの歴代音楽家たちをオマージュするに相応しい年である。そして、今年満40歳を迎えるアンドレが、ブラジル風タンゴ、ショーロなど民族音楽に影響されたピアノ曲を量産した、エルネスト・ナザレーをテーマに、この「交響的変奏曲」を書き、多くの聴衆に関心を集めた。
続く第二部の前半では、ニューヨーク出身、バーンスタインのバレエ曲「Fancy Free」を鮮やかに演奏。2014年に続き、今回2度目となるOSESPとの共演で既にブラジル人の心を掴み、多くのファンを確実に掴んでいる小曽根真は、今公演の第二部後半でガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」でソリストを務めた。最終日4日目のアンコールで、小曽根は、ジョビンの「Chega de Saudade」をジャズとバロック調に即興し、オーディエンス全員が歌えるように伴奏、劇場は大歓声に包まれ幕を閉じた。
この公演の為に、OSESPがアンドレに作曲依頼したのは、ブラジルの停滞するクラシック界を救う要素だったのであろう。これまでに精力的にあらゆるジャンルで様々な作品、アーティストと活動を広げている彼が、今後どのように独自の世界と向き合って、コンセプトを表現するのかに注目したいところだ。

(リオデジャネイロ●MAKO)


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