伝統音楽ソンハローチョを復興した モノ・ブランコのドキュメンタリー

映画『Conversaciones con Mono Blanco』のワンシーンより©Barlovento Films

映画『Conversaciones con Mono Blanco』のワンシーンより©Barlovento Films

メキシコ湾岸のベラクルス州の農民たちによって生まれた、アフロカリブ、先住民、スペインをルーツに持つ混血音楽で、300年以上続く伝承音楽、ソン・ハローチョ。その代表格とも謳われ、伝承歌のみだったソン・ハローチョに、オリジナル曲を採りいれ、現代の歌として蘇らせたグループ、モノ・ブランコのドキュメンタリー映画『Conversaciones con Mono Blanco』(ハイメ・クルス・ラミレス監督)が、現在メキシコ国内で公開中だ。この映画の製作のために、クラウドファンディングで資金が集められ、カフェ・タクーバのようなミュージシャンや、俳優のダミアン・アルカサルなどの文化人たちも支援した。本作は、国内のパンタージャ・クリスタル映画祭2016のドキュメンタリー部門で、価値ある証言賞を受賞した。

映画は、モノ・ブランコのリーダーである、ヒルベルト・グティーエレスの回顧録となっていて、ベラクルス南部の農村地帯トレス・サポテスや、小さな漁港トラコタルパンで過ごした幼少期、1970年代に、メキシコシティへ移り、ロックやフォークミュージック、プロテストソングの影響を受けながら、自身の中に秘めていたソン・ハローチョを探求するようになった経緯を語る。ヒルベルトは劇中で、「僕の生まれた緑豊かなトレス・サポテスは、開発されて、コンクリートの街となってしまった。だからこそ、今はない風景をソン・ハローチョのなかに求めて演奏し続けている」と語る。映画の随所に挿入される、美しいベラクルス州の農村や森林の姿は、失われつつあるものなのか、と切なくなった。モノ・ブランコおよび、ソン・ハローチョについて描いた貴重な作品なのは、いうまでもないが、メキシコ文化の深淵を知るのにもふさわしい作品だ。

モノ・ブランコは、ディズニー・ピクサーアニメの新作で、メキシコの死者の日を描いた『Coco』(2017年11月公開)のための映画音楽を、バンダ・ティエラ・モハーダ、カミロ・ララ(IMS)とともに、2016年11月上旬録音したばかりだ。声優のひとりには、俳優のガエル・ガルシア・ベルナルが抜擢されている。ピクサーアニメの日本公開は、間違いないだろうが、これを機に、モノ・ブランコの、この素晴らしいドキュメンタリーも日本公開され、ソン・ハローチョが盛り上がると良いのだが。

(メキシコ●長屋美保)


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