ブレーノ・シルヴェイラ監督の 新作『お針子とカンガセイロ』

ブレーノ・シルヴェイラ監督

ブレーノ・シルヴェイラ監督

映画監督として地歩を固めてきているブレーノ・シルヴェイラは、1964年、ブラジリアの生まれだ。映画の世界に入ってしばらく続けたのが、ドキュメンタリーの鬼才エドゥアルド・コウティーニョ監督のカメラマンであり、カルラ・カムラチ監督の『カルロタ・ジョアキーナ』の撮影助手を務めたのが1995年のことであった。

映画監督として最初に取り組んだ長編が、あの大ヒット作『フランシスコの二人の息子』(2005年)だった。セルタネージャ音楽のゼゼ・ヂ・カマルゴ&ルシアーノが誕生した経緯を実話に基づき映画化したこの作品の観客動員数は、なんと530万人。その次の『ゴンザーガ〜父から子へ』(2012年)は、ルイス・ゴンザーガがペルナンブーコ内陸部のエシューからリオに出てミュージシャンとして成功するまでの半生と息子ゴンザギーニャとの葛藤をドラマ仕立てで描いたが、これも観客動員数140万人とヒットしたのであった。

そんなブレーノ監督が、現在、編集段階に入っているのが『おとカンガセイロ』だ。義賊的野盗集団カンガセイロの頭目ランピアゥンの“押し掛け女房”マリア・ボニータをモデルとして、1920年代から30年代のノルデスチ内陸部で展開される物語だけに、のべ2か月に及んだロケはペルナンブーコ州、アラゴアス州、セルジッペ州と広範囲にわたり、最後のロケ地がレシーフェだった。旧市街やマルコゼロ広場での大掛かりなロケには野次馬も大勢集まったので、大いに話題になったが、これも11月末には終了した。

この映画の原作といえるのが、レシーフェ出身で現在マイアミ在住の作家フランセス・ヂ・ポンチス・ペエブレスの『お針子』で、オーヘンリー賞を受賞するなど米国読書界で話題になってから、ポ語翻訳がブラジルで出版(2009年)された小説だ。彼女の父親はアメリカ人、母親がレシーフェ出身という二重国籍者だが、英語で小説を発表しているので、米国人作家といってよい。彼女の母方のルーツはペルナンブーコ内陸部で、大叔母姉妹の一人がカンガセイロ部隊に参加したことから、この実話をもとに書き上げたのが、この文学作品だ。ブレーノ監督としては、ブラジル近代史におけるマリア・ボニータを女性の視点から見直そうという発想からこの映画化を決断した由だ。

ちなみに、祖父がペルナンブカーノだから、ブレーノ監督自身のルーツもペルナンブーコにあり、その意味ではご自身の家族史にも重なるのかもしれない。

(ブラジル●岸和田 仁)


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