サルヴァドールのカーニバルでダニエラ・メルクリのアフロヘアが物議

2017年3月26日
アフロヘアが物議をかもしたダニエラ

アフロヘアが物議をかもしたダニエラ・メルクリ

今年のサルヴァドールのカーニバルのテーマは、トロピカリア50周年とトリオ・エレトリコの最初の歌手といわれるモラエス・モレイラ。

モラエスは、今回オマージュされたことで、メインの時間帯で参加日数も例年以上に増えた。また、様々なバンドによって彼の代表曲「Chame Gente」が、演奏された。

もう一つのテーマであるトロピカリアであるが、ペロウリーニョ広場で行われたジルのライヴでは、カエターノが、飛び入り参加。トロピカリズモ運動のメインテーマ曲でもある「アレグリア・アレグリア」を歌った。ジルは、やはりトロピカリズモ時代の名曲「ドミンゴ・ノ・パルケ」などを披露。ブロコアフロのコルテージョ・アフロもジルをオマージュ。昨年は病気であまり元気ではなかったジルだが、最近は聴衆の面々に元気な姿を見せている。

今回のカーニバルで目立ったバンドといえば、バイアーナシステム。バイアーナシステムのライヴだけを楽しみたいという生粋のファン数が激増している。カーニバルでは5日間演奏し、観衆の数がすごい。カンポグランジ会場で歌手のフッソは、「クーデターを起こしたもの、ファシストはここを通ってはいけない!」と観衆をあおり、それに応じてギャラリーは「フォーラ!テメール(テメール大統領やめろ)!」を大合唱した。これにカーニバル委員会は、カーニバルに政治色をいれたと難色をしめしたが、バンドがなんらかの制裁をうけることはなかった。

今年のダニエラ・メルクリは、アフロヘアでエルザ・ソアレスをオマージュ。しかし後日、黒人人権運動者が、白人がアフロ文化の格好をするのはいかがなものかとダニエラにちくり。黒人女性がよくするターバンも白人がファッションのためだけにするのは、黒人文化を侵害しているという意見がネットで議論されていた。また、カーニバルルートの最後に警察関係者の観覧席があるが、その直前でダニエラが演奏を終了してしまい、これまた警察賛美者たちから、けしからん! とネットで叩かれている。ダニエラにとっては今回のカーニバルは踏んだり蹴ったりのようだ。

ただ、彼女は普段から黒人文化を賛美する歌やビデオクリップなどを作っているが、本当にダニエラ本人が彼ら自身を賛美しているのか、それとも単にマーケティングとして利用しているだけか、はなはだ疑問でもあるが。

ちなみにカーニバルでヒットするといわれ先月号で紹介した「Me Libera Nega」はそれほどヒットせず。レオサンタナの「サンチーニャ」が一番ヒットしたようだ。しかし、昨年のビンガドーラの曲「Metralhadora」と比べると、今年は大ヒット曲がなかった。

(バイーア●北村欧介)


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4月の営業日変更のお知らせ

2017年3月24日

平素よりラティーナをご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
4月の営業日に関して、変更がございます。

4月1日(土) 営業日
4月2日(日) 休

4月8日(土)営業日
4月9日(日)休

4月15日(土)営業日
4月16日(日)休

4月22日(土)休
4月23日(日)休

平日は通常、10時〜19時半の営業となっております。
何卒よろしくお願い致します。

株式会社ラティーナ

動物愛護をうたったアギア・デ・オウロ、鳥の羽不使用は史上初の試み

2017年3月23日
ルイーザ・メルとアギア・ヂ・オウロのカルナヴァレスコ©Celso Tavares/EGO

ルイーザ・メルとアギア・ヂ・オウロのカルナヴァレスコ©Celso Tavares/EGO

リオを代表するブラジルのカーニバルといえば、そのリズムを知らなくとも、羽飾りで彩ったセクシーなダンサーのことを思い浮かべる人は多いだろう。

今年、動物愛護をテーマにパレードしたサンパウロのエスコーラ・ヂ・サンバ、アギア・ヂ・オウロは、アレゴリア(山車)やファンタジア(衣装)に鳥の羽を全く使用しないパレードを行って話題となった。スペシャルリーグで羽飾りを使わないのは史上初の試みだったそうだ。

毎年いったいどれだけの量の鳥の羽がブラジルのカーニバルで消費されるかには想像が及ばないが、多くはブラジル、南アフリカ、インド、中国で飼育されるキジ、ガン、クジャク、ダチョウが出どころだそうだ。羽は器具によって根こそぎむしり取られるそうで、それらの鳥に出血や痛みを与えるのだそうだ。

パレードでの羽の不使用は、オマージュとしてエスコーラが、アレゴリアへの搭乗に招待した女優兼テレビ番組司会者のルイーザ・メルの交換条件だった。

メルは、自らの名を冠した動物愛護のインスティテュート(ilm.org.br/)を運営する活動家としても知られる。路上で不健康に暮らす動物の手当や保護、里親探し、あるいは自然や動物の保護を社会に啓蒙する運動を活発に行っている。

メルの参加は、羽の不使用に加えて、当初、犬がテーマだったパレードを動物全般の愛護へと変えた。変更はカルナヴァレスコ(衣装プロデューサー)がメルの意向に賛同したためだった。

アレゴリアから衣装までの全般をデザインするカルナヴァレスコは、鳥の羽に代えて使用済みペットボトルを多用した。ファンタジアの出来は、鳥の羽を使ったものに引けを取らない絢爛豪華さを演出した。

さて、気になるパレードの採点結果だが、なんと14チーム中13位という残念な結果に終わり、下部リーグへの降格が決まってしまった。鳥の羽を使わない衣装は、審査員の目には見栄えがしなかったのだろうか?

来年スペシャルリーグに返り咲くために、せっかく提唱した動物への愛を撤回して、鳥の羽を再び使うようにならないといいのだが……。

(サンパウロ●仁尾帯刀)


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リオのカーニバルで大事故が続々と発生 大きな影を落とす

2017年3月20日
3階部分が崩れ負傷者を出したウニドス・ダ・チジューカの山車

3階部分が崩れ負傷者を出したウニドス・ダ・チジューカの山車

世界最大の見世物のひとつと見なされているリオデジャネイロのカーニバルが、2月24日(金)の開会式に始まり、28日(火)まで繰り広げられた。26日(日)、27日(月)の2晩はメイン会場サンボドロモでスペシャルグループによるパレードが行われ、計12チームが競い、結果33年振りにポルテーラが優勝を飾った。

今回特に目立ったことは、異例の事故が相次いだことだ。最初の事故が起きたのは、スペシャルグループのパレードが始まった26日夜のこと。パライゾ・ド・トゥイウチの大型山車の一つが制御不能になり、フェンスにぶつかった。この事故で、地元の記者を含む20人が、足・大腿骨などの骨折の重軽傷を負った。事故の原因は、タイヤの破損であったと後日発表されたが、運転席に備えられるべきシートも無く、フロントから見れるエリアに限りがあったこと、そしてドライバーと運行情報を管理する責任者との間に状況を伝える機能が全くなかったことが、主な原因とされている。また、山車のタイヤ破損、雨の原因だけではなく、ジャーナリスト、報道カメラマンなどマスコミ関係者が、立ち入り禁止の危険エリアに進出することにも要因があったと発表している。

スペシャルグループ、2日目に最初にパレードを行ったウニオン・ダ・イーリャの最終山車も、コース入場前にコントロールを失った。車両のトランスミッションに問題があったのだと発表。怪我人は出なかったものの、不備を知り心配で頭を抱えていたチーム責任者は、その後体調不良を訴え救急車で運ばれたという。

そして同日、3番目に登場したモシダージの山車先端、約1メートル半の高さに乗っていた女性ダンサーが、足踏み台の破損により落下した。

又、同日4番目にパレードを行ったウニドス・ダ・チジューカのパレード開始間際にも事故が。2番目の山車の3階部分が突然崩れ、上で踊っていた8人と下敷きになった4人、計12人が負傷者となった。

コンテストの結果は事故の影響で、今回最下位のチームについては、降格なしの特別措置がとられ、2018年のリオのカーニバルパレードは13チームが登場、下位2チームが降格するコンテストとなる。壊滅的被害を与えた波乱のパレードは、山車の大型化の問題とその対策の不備が原因であろう。例え負傷者が出たとしても、心を痛めながらパレードを続行しなければならない現実に、命のはかなさや人生の虚しさを実感させられる、パレードとなった。

(リオデジャネイロ●MAKO)


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携帯泥棒の作った曲がヒット! MCベイジーニョの大躍進

2017年3月19日
パトカーのトランクから登場し、自作曲を延々と歌い続けるMCベイジーニョ

パトカーのトランクから登場し、自作曲を延々と歌い続けるMCベイジーニョ

 

 皆さんの中にどこにいてもある曲が脳裏をよぎったり、逃れられない経験をしたことはないだろうか。最近ある曲が、どこにいてもしつこく私の頭に繰り返し流れてきている。「Me libera nega, deixa eu te amar〜mais um,,, mais um,,」と忘れた頃にまた歌詞とメロディーが襲ってくるのだ。ちまたでは、この曲「Me Libera Nega」が今年のサルヴァドールのカーニバルでブレイクすると噂されている。

この曲の作者MCベイジーニョ(本名イタロ)は、昨年の11月までどこにでもいる普通の19歳の少年だった。ある時、イタロは、ピアタン海岸のバス停でバスを待っている二人に、ナイフをつきつけ、携帯電話を奪ったのだ。早速警察に捕まり、パトカーで連行されるのだが、連行中延々と自分の作った「Me Libera Nega」を歌い続けた。これに興味をもった警察の一人が、地元テレビ局の人気報道番組「バランソ・ジェラル」に連絡。この番組は毎日昼に放映される庶民向け報道番組で、捕まえたばかりの犯人にインタビューも行う。番組は警察から連絡を受け、署に着く前から中継カメラはまわっており、パトカーを追いかけていた。トランクドアを開けると、リポーターの質問に答えながらも、手錠をかけられながら「Me Libera Nega」を繰り返し歌い続けるイタロ。吸引していたクラック(ドラッグ)の影響もあったのだろう。あまりのしつこさに司会者も耳を塞いだ。

しかし、この奇妙な曲に興味を示したのが、ワールドカップ時にヒットした「Lepo Lepo」作者のフィリッペ・エスカンドゥラス。早速2日後に保釈金を払って釈放されたイタロと同曲を録音してYoutubeにアップロード。リズムは、イタロが好きなオロドゥンのサンバレゲエをとりいれた。この曲をカエターノが自宅で弾き語りで歌った映像がネットに流れ、これがきっかけで世の中に広まった。ソニー、ユニバーサルと契約したMCベイジーニョとして録音したビデオクリップは、300万以上の視聴数を獲得する。ピシリコ、ウェズリーサファダン、ルアンサンタナらもこの曲を歌い、オロドゥンもレパートリーに入れた。今年のカーニバルではダニエラとベルのトリオにもイタロのゲスト参加が決まった。

しかし、イタロは金儲けにただ利用されているのでは? という意見も多くみられる。確かにテレビでイタロの様子を見ると、自分の立場や権利を気にせず、単に自分の曲を披露したいだけの純粋な若者という印象を受けた。イタロの家族によると、最初に発掘したフィリッペが、30%の著作権をもらいたいとイタロに提案したらしいが、フィリッペはそれを否定している。いまだにドラッグ更生施設を寝床にしているイタロ。急激な人生の転機が逆に彼の悲劇にならなければいいと願っているが。

(バイーア●北村欧介)


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MPB情報発信源のラジオ局 突然の閉局で驚きと悲しみの声

2017年3月16日

 1月31日(火)の深夜、リオデジャネイロのブラジルポピュラーミュージック(MPB)ファンがこよなく愛したラジオ番組音楽“MPB-FM、FM90.3MHz”が突然廃局し、リスナーに衝撃を与え姿を消してしまった。その驚きは、リスナーだけではなく、局のスタッフやアーティスト達の耳に一気に巻い込んだ。

番組制作スタッフに対して、廃局について事前に伝えられていなかったという。終局日となった日の午後、全スタッフ約40人のPCのメールやインターネットが突如アクセスできなくなり、個々に明かされた解雇の通達は、大きなショッキングを与えた。大量解雇をしたという事実だけにとどまらず、MPBファンが永遠に楽しめる文化の存続の一つを失ってしまう結果を引き起こしたのだ。

このショッキングな出来事は31日(火)の夜、勤務後に自宅に向かう道中、街中の愛聴者達の耳にも吹き込まれ、一気に口から耳へ、耳から口へと伝達されたのだ。そしてSNSではラジオに日常茶飯事、頻繁に出演していた人気アーティスト達が集まり、「MPB-FMのラジオがなくなるということは、ブラジル音楽シーンの扉を閉じることと同じだ。」と主張した。終局を知らされたカエターノ・ヴェローゾとマルチナーリアが力強く肩を組んで「許されるべき出来事ではない!」と悲しみを伝えるメッセージ、アミルトン・ヂ・オランダが「ブラジル音楽が、そして我々ミュージシャンも、これほどまでに貴重で重要なブラジルポピュラーミュージックを代表する番組の終わりに悲嘆している。」など、ネット上で悲しみの声を発した。

事実、MPBを愛するリスナー達は、このFM90.3MHzを通して新しい曲と出会い、この番組を通して新しいアーティストを知り、ファンとなり、アーティストとの接点を深めてきた。そして過去には番組内でリスナーを招待し、抽選で入場者を集めて人気アーティストの生ライブを楽しむ『Palco MPB』という貴重な録音ライブ中継も行っていたのだ。番組のキャッチフレーズは「Tudo mundo ama! =皆んなが愛する!」というものだっただけに、その愛するものが突如姿を消してしまうショッキングなニュースは、MPBファンを揺るがした。

今やFMラジオ信号受信をチューナーを使ってラジオを聴く人は少なくなったものの、インターネット上の配信によってこよなく愛し試聴していたリスナーは、オフィスや自宅で仕事をしながら、そして家事をしながらどのラジオ音楽番組を楽しめば良いのであろうか?

(リオデジャネイロ●MAKO)


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クラウヂオ・アシス監督の最新作~人食いザメとフェルナンダ・モンテネグロ主演

2017年3月13日
クラウヂオ・アシス監督

クラウヂオ・アシス監督

 映画に出てくるサメといえば、スピルバーグの「ジョーズ」に代表されるようにの人間を襲う凶暴な人食いザメが定番であり、サメの生態についての海洋ドキュメンタリー映画でもないかぎり“サメの立場”に立つ映画なぞない。それが、環境破壊にからまった人間模様をドラマ化した、現在ロケ撮影中の社会派映画がサメを強欲人間の被害者として登場させる、ということでノルデスチ住民の注目を集めている。

この映画の監督はクラウヂオ・アシス。ロッテルダム映画祭で受賞した「愚か者たちの浅瀬」(2006年)でサトウキビ地帯で生きる庶民層の日常と祭りをノンフィクション・タッチで描き、ドキュメンタリー「シコ・サイエンス」(2008年)ではマンギ・ビート旋風を引き起こしたシコの半生を映画化した、ペルナンブーコ映画新世代を代表する監督だ。今や中堅映画人となったアシス監督が、今回の映画で批判・糾弾する対象は、スアッペ臨海工業団地に象徴される大規模経済開発だ。レシーフェから南へ約80㎞のところに位置するスアッペ工業団地には大型石油精製コンビナートはじめ多くの工場が設置されているが、この石油施設こそ、政界や財界の大物100名以上の逮捕を出している、ペトロブラス(国営石油会社)を巡る大型贈収賄疑惑の舞台の一つなのだ。

映画のタイトルは「ピエダーヂ」。憐憫とか信仰心という意味だが、レシーフェの南部海岸地区の地名でもある。この映画は、スアッペに隣接するタツオカ村にある、家族経営の軽食堂が舞台となってドラマが展開されるが、その女主人ドナ・カルミーニャを演じるのが大女優フェルナンダ・モンテネグロだ。

環境破壊の現実とその反対運動を映画で訴えたいアシス監督は、学生時代の1978年、まさにこのスアッペ臨海工業団地計画が正式に決定した年に、反対運動に参加していたというから、その意味では40年近く前の思念を映画化しているともいえるが、ストレートな社会派映画というよりも、人間とサメが錯綜するドラマが展開されていく由だ。

タイトルが掛詞になっていて、まさにピエダーヂがないから強欲な資本が環境も庶民の生活も壊していく、さらには人食いザメもスアッペ沖から追い出されたから、レシーフェのボアヴィアージェン海岸に出現するようになったのだ、ということだろう。

1月に入って、ペルナンブーコでロケが始まったが、この映画がいつ一般公開されるかはまだ未定だ。

(レシーフェ●岸和田 仁)


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スピード感とノルスタルジーの107分 映画「アシェー」が上映中

2017年3月10日

サルバドールが生み、90年代、00年代にブラジル国内外を席巻したダンサブルな音楽アシェーの盛衰を描いた長編記録映画『アシェー・ある場所の人々の歌(Axé – Canto do Povo de Um Lugar)』が1月に封切られた。

「アシェーの長男」とカエターノ・ヴェローゾが称するルイス・カルダスから現在スターの座に立つクラウジア・レイチやサウロ・フェルナンデスまでの約35年に渡るムーブメントの推移が、アーティストや関係者の証言と貴重な過去の映像によって繋がれたスピード感溢れる作品となっている。

出演者は、上述の他にダニエラ・メルクリ、イヴェッチ・サンガロ、チンバラーダ、ネチーニョ、シャンジ、エ・オ・チャンあるいはそれ以前からのジェロニモ、サラジャーニ、バンダ・ヘフレクソス、マルガレッチ・メネーゼスなどアシェーのスターたちを107分の映像で余すことを紹介している。

本作は監督シコ・ケルテスによる長編処女作で、プロダクションはサルバドールに拠点を置く制作会社マカコ・ゴルドが担った。地元の制作会社ゆえの人脈の豊かさと街の文化に対する愛情がしみじみと感じられた。

商業的規模の拡大とともに、ある現象がその本質を見失い、やがて廃っていく。それは音楽のブームに限らないが、アシェーはその道を歩み、先細りした感がある。

サルバドールからブラジル全国へ、そして世界へとアシェーが席巻するにつれて、資本は全国ウケする見栄えの良いルックスの歌手に集中し、欧米ポップスに迎合する音作りとなっていった。

ファンからの反感を承知の上で、個人的にはイヴェッチ・サンガロあたりから大味なアシェーあるいは、別物のポップスになっていったように思っている。

アシェーがすっかり様変わりしてしまった代表例としてクラウジア・レイチのお色気セミヌード写真やテクノ調の曲を紹介しているが、そこで終わらせずに結末としてソロデビュー後のサウロ・フェルナンデスを、原点を見直したアシェー界期待の星として描いる。

果たしてアシェーが90年代の勢いを取り戻せるかどうかは、さておき、同時代にアシェーのリズムで踊り狂ったことのある人ならば、涙腺が緩むのを感じるだろう。DVD化を期待したい作品だ。

(サンパウロ●仁尾帯刀)


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グレッグ・ランドゥ企画、『ハローチョ・パワー』が発足

2017年3月7日

 メキシコ東部ベラクルス州発祥の伝統音楽ソン・ハローチョを、オルタナティヴにアプローチする画期的なアルバム『ハローチョ・パワー』制作プロジェクトが2017年1月より始動した。集まったのは、グラミー賞に2度もノミネートされている、ロス・コホリーテス、80年代より伝統と他ジャンルをミックスした先駆的存在のソン・デ・マデーラ、ジャズやフラメンコ、ロックをミックスしたソネックス、管楽器も入ったジャム、レゲエ系バンドのロス・アグアス・アグアスの、現代ソン・ハローチョを代表するベラクルス州出身の4組。プロデュースは、米国の敏腕音楽プロデューサー、グレッグ・ランドゥと、チカーノ・ロック・バンド、ケッツアルのリーダー、ケッツアル・フローレスが担う。両名のプロジェクトは、過去にグラミー受賞経験があるだけに、この『ハローチョ・パワー』も、国際的な注目を集めることになるだろう。

なぜ、このプロジェクトが発足したのか、ロス・アグアス・アグアスのベーシスト、ダニエル・クルスに電話で聞いたところ、「2016年10月、グレッグ・ランドゥが、ロス・コホリーテスの新作録音のために、州都ハラパで、ソネックスのメンバーが運営するソン・ハローチョ文化センター兼録音スタジオ『ラ・カサ・デ・ナディエ』を訪れた。その際に、地元のグループを集めたアルバム『ハローチョ・パワー』を作りたいという話になって、僕たちは、彼のアイデアに共感した。せっかくだから、ベラクルスの地元で録音し、発信するプロジェクトにしたいので、同文化センターの録音スタジオのシステムを完璧にしたり、宣伝費を捻出するために、今年のトラコタルパンのソン・ハローチョ・フェスティバルを皮切りに、コンサートを行い、資金を集めている。アルバムでは、各グループが、書き下ろした曲を録音し、4バンドがセッションする曲も収録予定だ。すごく気合いの入ったアルバムになるに違いない」と、語る。具体的なリリース日程は、決まっていないが、

「まずは、資金を集めて、米国のプロデューサーたちを、ベラクルスへ招かなければならない。今年いっぱいは、このプロジェクトに集中するつもり」とのことだ。

米国の資金や基盤に頼らず、メキシコ主導で、プロジェクトを進める心意気が素晴らしい。これが達成したあかつきには、世界的ソン・ハローチョ・ブームが訪れる日も、近いだろう。

(メキシコ●長屋美保)


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キューバの奴隷出のボードビリアンの生涯 映画『シュコラ』 ロシュディ・ゼム監督

2017年3月4日

 

 現在、全国主要都市で公開中の映画『ショコラ』はキューバで奴隷の子として生まれ、売買されてスペインに渡り、脱走してフランス入り、一世を風靡したボードビリアンの物語。フランス映画、キューバ出身の、と喧伝されていないのでここで記しておきたい。

表題は男の芸名である。皮膚の色からチョコレートと比喩された。本名はラファエル、苗字なし。1865〜68年頃、まだスペイン領であったハバナで奴隷の子として生まれたと言われる。ラファエルとは奴隷主が便宜的につけたものだろう。そのラファエルが欧州に渡ったのもスペイン商人に買われ、バスク地方の農場に送り込まれたからだ。その農場から逃げ出し国境を越えてフランスの零細サーカス団に雇われた、それが前半生。出自にも確証があるわけではない。本人がそう語っただけだ。そのあいまいな分だけ、映画は興行的にも受けそうな挿話を創作できる。

サーカス団で役どころはめぐまれた体躯がアフリカの野生と獰猛を象徴する、と客引きに使われる。野卑な雄叫びで観客に安全な恐怖というカタルシスを与える役回りだ。

そんなラファエルの前に落ち目の芸人フティットが現われる。この役をチャーリー・チャップリンの孫ジェームス・ティエレが演じる。場末のうらぶれた芸人の悲哀、かつて絶頂を極めた時代の残り香もそこはかとなく芳わせ、あたりを睥睨する威厳を演じ切る表現力はやはり祖父の血筋か……。

フティッは二人組んで新手の芸を作ろうとラファエルに持ちかける。ラファエルもこのままではダメだと知っている。先は分からないが、どうせ身ひとつ、係累もない。賭けそのものが人生のようなものフティットについていくのも時の流れ、と快諾。シロクロ、デコボココンビは新手のボードビリアンとしてのし上がってゆく。

成り上り物語は映画の大きな要素。現実にはなかなか起こりようもない成功譚、しかし稀に確かに起こりうる話に惹かれるのだ。当たるはずがないと思いながら。

ラファエルを演じたオマール・シーの主演作に『最強のふたり』があり、『サンバ』があった。ともに、現代のフランス社会を揺さぶっているアフリカからの不法移民を演じ、教養はないが、まっとうな正義感はもっているという底辺労働者の役を演じた。その逞しさと、後ろ姿に不法越境路の困難、苦行をみせながら演じた好演を思い出す。それは、本作の演技にも深みを与えている。

(キューバ●上野清士)


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